用語説明
マイクロバイオーム研究
土壌や水中、人間の体内や表面などに存在する微生物群(細菌、真菌、ウイルス、古細菌など)全体の遺伝子情報を対象とした研究です。ヒトの遺伝子解析技術(DNAシーケンス技術やメタゲノム解析)を応用し、2007年ごろから人のマイクロバイオーム研究が世界中で本格的に開始されました。これまでの腸内微生物研究で行われていた細菌を培養することなく、約1,000菌種と言われる腸内細菌の全てをまるごと解析する研究に大きく発展をしました。
この研究により、宿主との相互作用や健康への影響の包括的な理解が可能になりました。腸内細菌叢や腸環境は、ヒトの一生の健康状態、さらには寿命までも関与する根源的なファクターであることが示唆されています。
この研究により、宿主との相互作用や健康への影響の包括的な理解が可能になりました。腸内細菌叢や腸環境は、ヒトの一生の健康状態、さらには寿命までも関与する根源的なファクターであることが示唆されています。
食物繊維
小腸で消化されにくく、吸収されにくい食品成分の総称で、第六の栄養素ともいわれています。食物繊維は国際的な共通定義がありません。植物由来・動物由来があり、分子量や構造、特性(発酵性、溶解性、粘性など)が大きく異なる様々な種類が存在します。食物繊維は種類により腸内で産生されるエネルギー量が異なること(発酵分解度が高いものは2kcal/g、発酵分解度が低いものは0kcal/g)がわかっています。
食物繊維摂取量の推奨値は、厚生労働省では25g/日、世界各国の国別指針では、約25~38g/日、世界保健機関(WHO)では、10歳以上で25g/日以上としています。
これに対し、日本人の食物繊維の平均摂取量(国民健康・栄養調査 令和5年/2023年調査報告)は、1日あたり約14g/日で、推奨値と比べ約9g/日の不足、諸外国とは最大24g/日の開きがあります。
食物繊維摂取量の推奨値は、厚生労働省では25g/日、世界各国の国別指針では、約25~38g/日、世界保健機関(WHO)では、10歳以上で25g/日以上としています。
これに対し、日本人の食物繊維の平均摂取量(国民健康・栄養調査 令和5年/2023年調査報告)は、1日あたり約14g/日で、推奨値と比べ約9g/日の不足、諸外国とは最大24g/日の開きがあります。
ルミナコイド
ルミナコイドは、日本食物繊維学会提唱する、腸内細菌叢の多様性の維持や宿主(ヒト)に有用な生理作用を生み出す難消化性の食品成分の総称です。「ヒトの小腸内で消化・吸収されにくく、消化管を介して健康の維持に役立つ生理作用を発現する食物成分」と定義されています。野菜、果物、穀類、豆類、芋類、種子類、キノコ類や海藻類に含まれています。代表的なものは、イヌリンやオリゴ糖、ペクチン、グアーガム分解物、β-グルカン、レジスタントスターチ、レジスタントプロテインなどで、特性の異なる多種類が存在しています。ルミナコイドとほぼ同義に使われる言葉として、「腸内細菌利用糖」「発酵性食物繊維」、「MACs:Microbiota accessible carbohydrates(腸内細菌まで届く炭水化物)」があります。
発酵性食物繊維
食物繊維の中で、腸内細菌が持つ酵素によって発酵分解され、様々な代謝物(短鎖脂肪酸や水素など)を産み出すものの総称です。ルミナコイドと同義です。食物繊維の中には腸内細菌によって発酵分解率によって分類されます。
発酵分解率25%未満(低発酵性食物繊維)
代表的なものは、セルロースやリグニン、アガロース、アガロペクチン、ポリデキストロース、サイリウム種皮、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウムなどの低発酵性(難発酵性)のものがあります。これらは、不溶性食物繊維としても知られています。
発酵分解率25%以上75%未満(中発酵性食物繊維)
代表的なものは、難消化性デキストリン、アラビアガム、アラビノキシラン、β-グルカンなどです。これらは、水溶性食物繊維として知られています。
発酵分解率75%以上(高発酵性食物繊維)
代表的なものは、グアーガム分解物(PHGG)、イヌリン、ペクチン、難消化性オリゴ糖、難消化性でんぷん(温熱処理でんぷん)などです。難消化性でんぷんは水溶性と不溶性の両方の性質を持つことで知られています。
発酵分解率25%未満(低発酵性食物繊維)
代表的なものは、セルロースやリグニン、アガロース、アガロペクチン、ポリデキストロース、サイリウム種皮、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウムなどの低発酵性(難発酵性)のものがあります。これらは、不溶性食物繊維としても知られています。
発酵分解率25%以上75%未満(中発酵性食物繊維)
代表的なものは、難消化性デキストリン、アラビアガム、アラビノキシラン、β-グルカンなどです。これらは、水溶性食物繊維として知られています。
発酵分解率75%以上(高発酵性食物繊維)
代表的なものは、グアーガム分解物(PHGG)、イヌリン、ペクチン、難消化性オリゴ糖、難消化性でんぷん(温熱処理でんぷん)などです。難消化性でんぷんは水溶性と不溶性の両方の性質を持つことで知られています。
プロバイオティクス/プレバイオティクス/シンバイオティクス
プロバイオティクスは、「腸内細菌叢のバランスを改善することによって宿主の健康に有益に働く生きた微生物」と定義されています。1989年にイギリスの微生物学者ロイ・フラー博士が、「抗生物質(アンチバイオティクス:against life=生命に対峙する)」に対して、対照的な意味を持つ「プロバイオティクス(for life=生命のために)」として提唱し、広く一般的に知られるようになりました。
プレバイオティクスは、「消化管で分解されず、大腸の特定の細菌(ビフィズス菌など)を増殖させ、宿主に有益な作用をもたらす難消化性の食品成分」と定義されています。1995年にイギリスのグレン・R・ギブソン博士とマルセル・ローバーフロイド博士によって提唱されました。プレバイオティクスはプロバイオティクスの作用を引き出すために提唱された補完的な概念です。
シンバイオティクスは、「プロバイオティクスもプレバイオティクスを組み合わせて摂取することにより、相乗的に健康増進効果をもたらすもの」と定義されています。1995年にイギリスのグレン・R・ギブソン博士らによって提唱されました。これらの概念は、体系的なマイクロバイオーム研究が本格的に始まる以前のものです。
プレバイオティクスは、「消化管で分解されず、大腸の特定の細菌(ビフィズス菌など)を増殖させ、宿主に有益な作用をもたらす難消化性の食品成分」と定義されています。1995年にイギリスのグレン・R・ギブソン博士とマルセル・ローバーフロイド博士によって提唱されました。プレバイオティクスはプロバイオティクスの作用を引き出すために提唱された補完的な概念です。
シンバイオティクスは、「プロバイオティクスもプレバイオティクスを組み合わせて摂取することにより、相乗的に健康増進効果をもたらすもの」と定義されています。1995年にイギリスのグレン・R・ギブソン博士らによって提唱されました。これらの概念は、体系的なマイクロバイオーム研究が本格的に始まる以前のものです。
MACs(マック)
アメリカでは、従来のDietaryfiber(食物繊維)に変わる概念、「MACs:Microbiota accessible carbohydrates(腸内細菌まで届く炭水化物)」といわれています。スタンフォード大学スクール・オブ・メディスン微生物学・免疫学上級科学研究員ジャスティン・ソネンバーグ博士らが提唱しました。
超生命体(ちょうせいめいたい): superorganism(スーパーオーガニズム)
微生物学および分子生物学者のジョシュア・レダーバーグ博士(ノーベル賞⦅医学、生理学⦆受賞者)が、2000年に「我々は、ヒトと常在菌が高度に絡み合った“超生命体(superorganism)”」と捉える必要性を提唱しました。
シンバイオシス/ディスバイオシス
シンバイオシスとは「共生」を意味し、腸内細菌叢の多様性のあるバランスが整った状態をさします。ディスバイオシスは、「腸内細菌叢の乱れ」を意味し、多様性のないバランスが崩れた状態をさします。
短鎖脂肪酸(たんさしぼうさん)
腸内細菌による発酵性食物繊維の代謝物。腸内細菌の多様性の維持に貢献し、免疫機能の調整や、腸などのエネルギー源など様々な健康効果をもたらす。短鎖脂肪酸は、酪酸(らくさん)、プロピオン酸、酢酸(さくさん)などいくつかの種類の有機酸の総称です。
IgA抗体(アイジーエーこうたい)
IgA抗体は「免疫グロブリン(抗体)」の一種で、B細胞という免疫細胞がつくり出すタンパク質です。IgAは体内の粘膜表面などに分布し、ウイルスや細菌の侵入を防ぎますが、IgAそのものは細胞ではなく、免疫細胞が産生・分泌する分子です。
恒常性維持機能(こうじょうせいいじきのう)
恒常性維持機能とは、「ホメオスタシス」ともいわれ、生物が外部環境や体内の変化にかかわらず、生命を維持するために必要な生理機能を一定の状態に保とうとする機能のことです。体温、体液、血圧、血糖値など、様々な生理機能がこの機能によって調整されています。
必須栄養素
「必須」は必ずなくてはならないことをいいます。必須栄養素とは、生命を維持し、健康的な生活を送る上で必要不可欠な栄養素で、体内で合成できない、または十分な量を合成できないために、外部から摂取する必要のある栄養素のことをいいます。
代謝
体内で物質を変化させる化学反応のこと。例えば、栄養素を分解してエネルギーを作ったり、新しい細胞や組織を合成したり、老廃物を排出したりする働きをさします。代謝が良いと消費されるエネルギー量が増え太りにくくなる、冷えやむくみの改善、髪や肌の艶やハリが増すなどの効果が期待できます。
基礎代謝
基礎代謝とは、代謝の一部で、生命活動を維持するために最低限必要なエネルギー消費のこと(エネルギーの出入力)をさします。基礎代謝が高いと血行が良くなり、老廃物の排出が良くなるなど、健康な状態維持につながります。
新陳代謝
新陳代謝とは、代謝の一部で、古いものが新しいものと入れ替わること(物質の合成と分解)をさします。新陳代謝が活発だと、傷の修復、肌や髪、爪の生え変わり(ターンオーバー)の周期が正常になります。
生活習慣病
生活習慣病とは、食習慣や運動習慣、睡眠・休息、飲酒や喫煙などの生活習慣が、発症や進行に深く関与する病気の総称です。長年の生活習慣の積み重ねで、ゆっくり進行すると考えられています。具体的な疾患名では、高血圧、脂質異常症、糖尿病、心疾患(狭心症、心筋梗塞など)、脳血管疾患(脳卒中、脳梗塞、脳出血など)、がんなどがあります。
免疫
免疫は、私たちの健康維持に不可欠な「生体防御機能」のことです。免疫には、細菌やウイルス、がん細胞といった異物が体内に侵入するのを防ぎ、それを取り除く仕組みで、「自然免疫」と「獲得免疫」があります。
「自然免疫」とは、人が生まれながらに持っている免疫システムで、異物が体内に侵入した際に、速やかに検知し、最初の防御ラインとして攻撃・排除する働きをします。「獲得免疫」は一度遭遇した異物の情報を記憶し、次回侵入時にはより強力で的確な攻撃を行う仕組みです。ワクチンはこの獲得免疫の仕組みを利用した予防法で、あえて病原菌や毒素を体内に入れ、免疫細胞に抗体を作らせて、速やかに攻撃できるようにするためのものです。
「自然免疫」とは、人が生まれながらに持っている免疫システムで、異物が体内に侵入した際に、速やかに検知し、最初の防御ラインとして攻撃・排除する働きをします。「獲得免疫」は一度遭遇した異物の情報を記憶し、次回侵入時にはより強力で的確な攻撃を行う仕組みです。ワクチンはこの獲得免疫の仕組みを利用した予防法で、あえて病原菌や毒素を体内に入れ、免疫細胞に抗体を作らせて、速やかに攻撃できるようにするためのものです。
炎症
生体に対する刺激や侵襲によって生じる局所的反応の一種で、炎症が起きると、「腫れ・発赤・痛み・かゆみ・熱」という症状として現れます。これは免疫細胞が働いて病原体と戦っている状態で、傷を負ったり、病原体に感染したりした時に起きます。
急性炎症と慢性炎症
炎症には「急性炎症」と「慢性炎症」があります。一般的に知られている炎症のほとんどは急性炎症です。急性炎症とは、傷を負った場合や感染した際などの初期に起こる防御反応で、赤くなったり腫れたり、かゆみが出たりしますが短期間で回復するのが特徴です。
しかし、身体の同じ箇所で長期間にわたり炎症が続くことがあります。これが「慢性炎症」です。炎症が長引くと、細胞や血管が傷つき劣化し、様々な病気を引き起こします。この慢性炎症は全身のどこでも起こる可能性があり、見えない、自覚症状がないことから「サイレントキラー(静かなる殺人者)」といわれます。
しかし、身体の同じ箇所で長期間にわたり炎症が続くことがあります。これが「慢性炎症」です。炎症が長引くと、細胞や血管が傷つき劣化し、様々な病気を引き起こします。この慢性炎症は全身のどこでも起こる可能性があり、見えない、自覚症状がないことから「サイレントキラー(静かなる殺人者)」といわれます。